税理士業界ニュース
(2012年9月)

事務所発展の鍵は人材にあり
「給与規定」のない会計事務所では人材を雇えない


生き残るためには、給与規程と研修制度が必須

 ある業界関係者はこう話す。「やはり事務所の人事制度が整っていないところには、人材は入ってきません。給与規程と研修制度、この2つが今後、会計事務所が生き残っていくために絶対に必要です」

 会計業界のポールシフトが起こり、環境が激変してから久しい。しかし、まだその変化は終わったわけではない。

 近10年はマーケティングと低価格化の波が押し寄せたが、次に来るのは人材の奪い合いだ。会計事務所の資源は「人」。生き残りを懸けた優秀な人材の奪い合いがこれから始まる。

 会計事務所が人材獲得競争に参加するために必要な「最低資格」ある。それが「給与規程」と「研修制度」だ。この資格なくしては、この競争に参加すらできない時代なのだ。

 今回本誌では、株式会社TACプロフェッションバンクと株式会社大原キャリアスタッフの協力のもと、両社主催の就職イベントに潜入取材を試みた。

 会場で行った学生への出口調査の結果、興味深い事実が次々と明らかになった。

■アンケート1 「どんな事務所に勤めたいですか?」(複数回答)

 まずはアンケート1をご覧いただきたい。

 最多の票を集めたのが「人間関係が良い」との答え。これは気持ちよく仕事ができる、居心地が良い職場を希望していると言い換えられる。会計業界はもともと人材の回転が速い業界ではある。

 しかし、会計事務所に会計処理だけではなくコンサルタント業務も期待されている今、顧問先との間に太い信頼関係を結ぶためには職員を簡単に辞めさせてはならない。

 人材が簡単に流出してしまう事務所は、顧問先の信頼を失い、勤めている職員のモチベーション低下を招き、さらに外部から優秀な人材も取りにくくなるという負のスパイラルを引き起こす。この連鎖は是が非でも止めなければ事務所の成功はない。

 では、職員に長く安心して働いてもらうためにはどうすれば良いのだろうか? その答えは「給与」だ。


給与規定のない事務所ではもう人材は雇えない

 昨今の就職希望者は総じて「草食化」しているという。これはアンケート2の「給与」に関する答えを見ても伺える。勤めたくない事務所として「給料が安い事務所」と答えたのはわずか4%、はじめから高給は期待していない現状が分かる。

■アンケート2 「どんな事務所には勤めたくないですか?」(複数回答)

 現在、会計業界における就職状況は、事務所側の買い手市場となっている。

 ところが、良い人材/優秀な人材には人気が集中しており、「優秀な事務所発展の鍵は人材にあり「給与規程」のない会計事務所では人材を雇えない人材にとっては売り手市場」という一極集中現象が起こっている。

 他事務所との採用競争に勝ち抜き採用できた人材も、薄給で雇用し続けていては、事務所の将来に希望が持てず離職してしまう。

 それを避けるためには、職員の成長に合わせた給料を払うための「給与規程」が不可欠だ。

 良い人材を確保し、経験を積ませ事務所の中軸を任せられる戦力となるまで育て上げる。

 職員に支払う給料は「コスト」ではない。事務所を成長させるために必要な「投資」なのだ。