税理士業界ニュース
(2012年8月)

新規顧客を獲得する「営業力」の秘密とは?

 これから会計事務所を維持していくためには新規の顧客獲得が不可欠。得意・不得意にかかわらず、積極的な営業活動が必要になるだろう。

 「営業力は生まれ持ったセンスで決まる」「自分は営業に向いていない」、そこで弱気になる必要はない。営業力は天賦の才だけで決まるのではない。そこにはノウハウや理論、原理原則が隠されているのだ。

 会計事務所が生き残りをかけて、今後取り組んでいかなければならない課題は何か。

 それは「営業力をどうやって高めていくのか」の一点に尽きる。会計事務所が今後も経営を維持するにあたっては、新規顧客の開拓が不可欠。企業数は年々減少していく一方で、税理士数は7万人で高止まっている。ライバルの数は減らないままに、パイだけが縮小しているのだ。

 このような状況の中で事務所を維持するためには、減少する顧問先の数以上に新規の顧客を増やしていくしかない。

 どんなに優秀な技能を持っていても、どれほど豊富な知識を持っていても、それらをサービスに変換して提供するお客様がいなければ、ただの宝の持ち腐れとなってしまう。その技術、知識、経験を存分に発揮するためにも、今こそ「営業力」の向上に力を注ぎ、新規の顧客獲得に向けての準備を進めるときだ。


「紹介」を得るためにも「新規顧客」が必要

 グラフ1は、弊社が今年の1月に発行した『会計事務所の経営白書2012』でご紹介した「新規獲得のために力を入れていること」の内訳である。

グラフ1 新規獲得のために力を入れていること

 新規獲得を増やしている事務所は、「顧問先からの紹介」が約4割、一方で、新規獲得を減らしている事務所は約6割となっている。

 現在、会計事務所の新規拡大手段は顧問先からの紹介が中心であることに変わりはないが、紹介だけに依存している事務所ほど、新規顧客を減らしているのだ。

 今後、劇的に日本の経済状況が好転する見込みがない以上、お客様の数は黙っていては自然減となってしまう。

 これは実際のお客様が減っていくのと同時に、紹介をしてくださるお客様が減るという意味でもある。紹介を中心に顧客の数を増やしていくことがいかに危険か、その危険性はもはや顕在化している。


「営業力」を手中に収め事務所の未来を作り上げる

 今後、望むと望まざるとにかかわらず会計事務所にとって「新設法人の顧客獲得」が必須となっていくだろう。

 グラフ2は、東京商工リサーチが今年の2月に発表した「業歴別 企業倒産件数構成比推移」である。

 1997年の数値では、業歴が10年未満の企業の倒産件数構成比が約35%である一方で、業歴30年以上の企業は約15%、圧倒的に業歴の長い企業の方が生き残る可能性が高かった。

 しかし、2001年以降はその割合が逆転、業歴30年以上の企業の倒産件数構成比が約31%にも上る一方で、業歴10年未満の企業は約24%となっている。もはや「長寿企業は安定した優良顧客」「新設法人はすぐ潰れてしまう不安定な顧客」とはいえなくなっている。

グラフ2 業歴別企業倒産件数構成比推移

 これらの数字から判断するに、今後は倒産や廃業で減っていく顧問先の数を、新設法人の新規顧客でカバーしていく傾向が会計業界全体で広がっていくだろう。

 そのために会計事務所がしなければならない準備が「営業力の向上」なのだ。「営業力」は生まれながらの才能だけで決まるものではない。そこにはノウハウや理論が隠れている。原理や原則を体系立てて理解することで、その能力は飛躍的に向上する。

 営業について学び、事務所の未来を作り上げるのは「今」だ。