税理士業界ニュース
(2012年5月)

「低価格競争」から脱却するには決算を武器にしろ!

 低価格競争はいつまで続くのか。今以上に低価格化が進むのか、今が底なのか、いろいろな見方がある。

 業界内の多くの意見をまとめると、今がちょうど低価格競争のピークを迎えており、ほぼ下げ止まったのではないかという見方が多勢を占めるようだ。

 低価格化が一段落すると、次は必ずクオリティーの時代になる。

 すると、会計事務所はどこで勝負すればよいのか。

 会計事務所のサービスは次の3つに大別できる。

1.月次顧問
2.決算申告
3.「+α」のコンサルティング

 現状では大部分の会計事務所が1.の月次顧問で勝負をかけて、月次顧問料を下げている。しかし、月次顧問だけで戦っていると、すべての料金を下げていかなければならない。

 そこで2.3.のように「決算」と「コンサルティング」にフォーカスし、業務に付加価値をつけて、バリューを顧客に見せるようにする。すると、顧客から選ばれる会計事務所になり、競争に勝つことができる。そのために、決算とコンサルティングの業務を高付加価値ビジネスとして見直す必要があるだろう。

 このたび弊社では「決算に関するアンケート(予備調査)」を実施。その結果の一部を右のグラフにまとめてみた。グラフ1は「決算時にどんなサービスを行っているか」の結果を記している。決算診断、決算報告会といったサービスを実施している事務所は、さほど多くないことが読み取れる。

グラフ1

6割の会計事務所が決算料の値下げ要求を受ける

 「決算に関するアンケート(予備調査)」では、決算料についての質問も設けている。グラフ2は「決算料の値下げ要求を受けたことがあるか」についてのアンケート結果を示している。実に6割の会計事務所が顧問先から決算料の値下げを要求されたと回答。そのうち8割前後が値下げ要求に応じていることが判明した。

グラフ2

 これは何を意味しているか。会計業界特有の「決算料」という仕組みに付加価値を感じていない経営者が多いことを指している。

 納税と同時に決算料の請求が加わると、企業にキャッシュフローの負担をもたらすことから、経営者は決算料に対してマイナスイメージを持っている。よほどの付加価値が感じられない限りは「決算料をできるだけ安く抑えたい」と考えてしまうのも無理がない。

 特に現在では電子申告の普及で、決算時の顧問先との関係が希薄になっている。電子申告の場合、申告書に署名押印の必要がないため、従来のような一大イベント感が薄れているのだ。電子申告の普及が決算料の価値を見えなくさせているようにも感じられる。

 では、どうすれば決算料の意義をアピールできるか。中には電子申告でも申告書をプリントアウトして、税理士がサインを施す会計事務所が見受けられるが、単に決算申告を儀礼的に演出すればいいという次元ではない。決算業務自体に付加価値をプラスすることが必要なのだ。決算に付加価値が加わると、顧問先は決算料という仕組みを理解し、価値を感じ、値下げを要求することがなくなる。それには「決算コンサル」が最も有効である。

 これまでの決算コンサルというと「時間をかけて行う」「専任担当者がいる」「高額の料金を請求する」というスタイルが一般的だった。しかし、これからの会計事務所の決算コンサルはLCC(ロー・コスト・コンサルティング)が求められる。

 最近では激安航空業者LCC(ロー・コスト・キャリア)が話題となり、低価格志向の旅行客のニーズを満たしている。同様に、会計事務所は「時間をかけない」「専任担当者を置かない(誰でも担当できる)」「リーズナブルな料金を設定する」LCCを実践すべき時代に突入した。5月は法人の決算申告が集中する。低価格競争から抜け出すためには「今そこにある決算」を武器にすることを検討してみよう。