会計事務所経営に役立つ情報
(2017年2月)

「情報提供」から「受注」までのスムーズな仕組みをつくることが大事

 ものづくり補助金や創業補助金の申請をサポートして、しっかり採択されれば、顧客満足度が格段に上がり、顧問契約や報酬アップにつながります。しかし、申請には手間がかかり、必ず採択されるわけではないことから、補助金申請を扱うのを敬遠する会計事務所は少なくありません。補助金が採択されるにはポイントがあるのです。今回はDVD教材「認定支援機関ビジネス実践会 公的事業計画作成講座」より、補助金受注のポイントについて、講師の若杉拓弥氏(若杉公認会計士事務所 代表 公認会計士)が解説します。

無料オファーとフロントエンドをシームレスに

 「経営力向上計画」などの新制度を、お客様に紹介するときに、紙ベースで案内できる仕組みが必要となってきます。お客様に直接、メールや電話で伝えてもいいのですが、確実ではありません。

 たとえば電話で「経営力向上計画という制度がありますがご存じですか?」とお客様に話しても「あ、そうなんですね」と返されて終わりで、別途クロージングを行う必要があります。「情報提供」と「受注」というプロセスが分断されると、効率が良くありません。

 図を見ていただきたいのですが、事業は無料オファー、フロントエンド、バックエンドから成ります。補助金を受注するかどうかという状態は、ちょうど無料オファーとフロントエンドの境目にあたります。ここをできるだけシームレス(継ぎ目のない状態)にして、自動的にフロントエンド商品を受注できるような仕組みをつくっていくことが重要なのです。

受注までスムーズに流れる申込フォーム

 私がオリジナルで制作した補助金などのチラシには、「無料相談申込」のフォームをつくっています。

 「申請希望の方はFAXをご送付ください」と入れており、情報提供すると同時に,受注までスムーズに流れていくフォームにしています。もちろん、情報提供は大事です。情報を提供したからには、せっかくならば受注したいですよね。だから、どうすれば情報提供から受注への流れが円滑になるかを考えました。

「電話相談希望日」を第2希望まで記入してもらう

 私のチラシでこだわっているポイントが「無料相談」のところで、「電話相談希望日」という欄を入れてあります。ただ単に無料相談の申し込みをもらっても、改めて日程調整しないといけなくなり、機会ロスにつながります。電話相談希望日を第2希望まで記入してもらうようにすることで、スムーズに案件獲得まで進めます。

 また、補助金申請で必要なのは、投資内容のヒアリングです。私はチラシに「投資内容」の欄を設け、次の3つの選択肢を示しています。

  • □ 投資概要(内容、取得時期)が決まっている
  • □ 決まっていないが、9月までには決めることができる
  • □ 決まっていないが、公募時(10月以降)には決めようと思っている

 お客様のなかには「補助金を絶対やりたい」という人もいれば「ちょっと興味がある」という程度の人もいます。「絶対やりたい」という人は普通に申し込みをいただけますが、「ちょっと興味がある」という人もしっかりとつなぎ留めておく必要があります。

 そのため3つのチェックボックスを設けることで、相談希望者の間口を広げられます。「興味があるけれど、まだ具体的には決まっていない。もし決まったら相談しようかな」というお客様に対しても、タイミングよく適切な対応とプランニングができます。

 このように、無料相談の間口を広げるチェックボックスは、案件獲得に大きな力を発揮します。

 今後、補助金等に関して、いろいろな制度が出てくることが予想されます。専門家として情報提供していく必要があるのはもちろんですが、情報提供しながら案件につなげることも重要です。受注につなげるためのツールづくりに努めていただければと思います。


認定支援機関ビジネス実践会 公的事業計画作成講座