会計事務所経営に役立つ情報
(2016年10月)

300万円超の助成金を活用し”士業事務所”に特化した組織作りを提案

 司法書士、社会保険労務士、土地家屋調査士と、複数の資格を活用し、士業事務所を営んできた社会保険労務士法人アクシスの中須浩二氏。これからの時代を戦っていくすべての士業事務所のために、助成金を利用した組織体制作りを提案している。

複数資格を大いに生かした新しい業務の柱

 行政書士、司法書士、社会保険労務士、土地家屋調査士と、複数の資格を効果的に活用し、士業事務所を運営してきた中須浩二氏。数年前までは司法書士事務所として、過払い金請求を業務のメインにしていたという。

 「そのころから過払い金に代わる柱を模索していました」と、現在は、司法書士事務所としては、地元の葬儀社と提携して相続に特化。税理士とも提携し、案件を増やしている。毎月約30件の無料相談を受け、90%以上の受任率を誇っている。

 また、土地家屋調査士としては、千葉県の土地家屋調査士17事務所とアライアンスを組み、全国でも最大規模の測量集団を形成。自治体とのつながりや機動力を武器に、規模を拡大している。また、そこから相続の案件へとつながることもある。

 そして社労士として力を入れているのが、助成金をフックとした士業事務所の組織化だ。

助成金を活用した効率的経営を提案

 法人化が認められて、業界に激震が走ったのは、どの士業も同じ。「資格者が営業するだけで食べていける時代は終わった」と、中須氏は警鐘を鳴らす。また、やみくもに営業するだけではダメだともいう。

 「昭和の時代から士業は徒弟制度でしたし、キャリアアップという視点はありませんでした。また、士業には一匹狼的な人がまだまだ多いのも事実です。しかし、もはや資格を持っていれば食べていけるという時代ではなくなりました。司法書士事務所も法人化が認められると業界がガラッと変わりました。そうした中で、多くの先生方は、営業やマーケティングなどを学んでいますが、事務所の組織作りやマネジメントにはあまり注意を向けてはいません。これからの時代は士業事務所も一企業として組織で闘っていく必要があります」

 そこで、まず取り組んだのが自事務所の組織化だった。

 人事評価や育休等の制度を整備し、従業員の労働環境を改善。従業員が働きやすくなっただけではなく、環境整備がキャリア形成促進助成金をはじめとしたさまざまな助成金の受給につながっていった。1年間で受給した助成金の総額は300万円を超えるという。今後はこのノウハウをマニュアル化して他の士業事務所に提供していくことを考えている。

 「助成金を受けることで、事務所の組織整備費用はほとんどかかりません。むしろプラスになります。きっかけは助成金でもいいと思います。結果として、組織作りができるわけです」

 中須氏は、司法書士事務所や社労士事務所だけではなく、各士業向けの社内規定を準備している。ここでも複数の資格が役に立っている。

 「以前、司法書士として組織作りのセミナーに参加したときに、社労士の方に話を聞いてもらいましたが、他の士業については、あまり理解していないということがわかりました」

 同業の司法書士と社労士はもちろん、弁護士や税理士とも提携することで、あらゆる士業事務所に対応するマニュアルができるという。そして、このマニュアルが特徴的なのは、社内検定制度をつけていることだ。

 「他の社労士は、社内検定制度までは、やっていないと思います。全般的な内容もありますが、その事務所特有の業務を知る必要があるので、所長から事務所のすべての業務についてヒアリングしていきます。そうすることで、事務所が目指しているものや、評価の基準が明確になります。可視化できることで、社員も何が必要かがわかるのです。社内検定制度はオプションになりますが、普通検定と上級検定の2種類を考えています」

士業に特化した社労士事務所として

 「士業が好きだ」という中須氏は、これから、社労士業務は士業事務所に特化していきたいという。「どの士業も、これからは組織で闘っていかないといけません。所長先生ひとりでは限界があるので、職員さんが貴重な戦力になることが求められます。そこをお手伝いできればと思います。士業業界向けの社労士業務でナンバー1を目指しています」


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