会計事務所経営に役立つ情報
(2016年2月)

第12回新春感謝祭2016より
平成28年度税制改正のポイント


 「第12回新春感謝祭2016」1日目のメインイベントは、毎年恒例の平川忠雄氏(税理士法人平川会計パートナーズ 代表社員税理士)による「速報!平成28年度税制改正のポイント」。数々の改正ポイントを知ろうと、参加者の知的好奇心がピークに達した。同セミナーのポイントを紹介する。

制度の「延長」「見直し」が多い

 「ここまで詳しい資料をいただけるのは、新春感謝祭の税制改正セミナーならでは」と参加者に喜ばれているように、新春感謝祭の名物となっている平川氏の税制改正セミナー。平成28年度の税制改正について、平川氏は次のように評している。

「トピックといえば、消費課税の軽減税率制度だと思います。大勢の事業者が負担を強いられることと存じます。ただ、それ以外はこれといった目玉がなく、今までの制度の延長や見直しといった内容が多かったような感じがします。一方、時代を反映したユニークかつ新しい税制が登場しています」

 平成28年度税制改正の主な概要としては、以下が挙げられる。

1.個人所得課税

(1)空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の創設
相続により生じた空き家であって、旧耐震基準しか満たしていないものに関し、相続人が必要な耐震改修または除却を行った上で、家屋または土地を売却した場合の譲渡所得について特別控除(3,000万円)を導入

(2)住宅の三世代同居改修工事等に係る特例の創設
三世代同居に対応した住宅リフォームに関し、借入金を利用してリフォームを行った場合や、自己資金でリフォームを行った場合の税額控除制度を導入(借入金:住宅借入金等の年末残高の1〜2%、自己資金:標準的な工事費用相当額の10%)

(3)医療費控除の特例の創設
検診・予防接種等を受けている個人を対象として、いわゆるスイッチOTC医薬品の購入費用(年間1.2万円を超える部分の金額)についてセルフメディケーション推進のための所得控除制度(医療費控除の控除額計算の特例措置)を導入

2.資産課税

(1)農地保有に係る課税の強化・軽減
農業委員会から農地中間管理機構との協議の勧告を受けた遊休農地について、通常の農地より固定資産税を引上げ
所有する全農地を農地中間管理機構に10年以上貸し付けた場合は、固定資産税等の課税標準を最初の3年間価格の2分の1とする特例措置を創設

(2)中小企業者が取得した機械及び装置に対する固定資産税の軽減
中小企業の生産性向上に関する法律(仮称)の制定を前提に、中小企業者等が同法の施行の日から平成30年度末までに、一定の機械及び装置の取得をした場合には固定資産税の課税標準を最初の3年間価格の2分の1とする特例措置を創設

3.法人課税

(1)成長志向の法人税改革
●法人実効税率の引下げ等
●課税ベースの拡大等
イ:租税特別措置の見直し
ロ:減価償却費の見直し(建物付属設備・構築物の償却方法を定額法に一本化)
ハ: 欠損金繰越控除のさらなる見直し(大法人の控除限度額 平成26年度:所得の65%→60%、平成29年度:所得の50%→55%)
ニ: 法人事業税の外形標準課税のさらなる拡大( 現行平成27年度:3/8→平成28年度:5/8)

(2)租税特別措置の見直し
生産性向上設備投資促進税制の縮減・廃止(現行:即時償却等→平成28年度:特別償却率50%等→平成29年度:廃止)
環境関連投資促進税制の見直し(売電用の太陽光発電設備の除外等)「空き家問題」「外国人旅行者の“爆買い”」にも対応
●雇用促進税制の見直し(対象地域・対象雇用者の限定)等

(3)地方法人課税の偏在是正
(平成29年度〜)
●法人住民税法人税割の税率の引下げ及び地方法人税の税率の引上げ
●地方法人特別税及び地方法人特別譲与税の廃止
●法人事業税交付金の創設

(4)地方創生支援税制(企業版ふるさと納税)の創設
地域再生法の改正を前提に、地方公共団体の行う認定計画に記載された一定の事業に関連する寄附金を支出した場合の税額控除を創設

4.消費課税

(1)消費税の軽減税率制度の導入
●平成29年4月から軽減税率制度を導入
●対象品目は(1)酒類及び外食を除く飲食料品、(2)新聞の定期購読料
●軽減税率は8%(国分:6.24%、地方分:1.76%)
平成33年4月から適格請求書保存方式を導入。それまでの間は簡素な方法とするとともに、税額計算の特例を設ける

(2)外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充
外国人旅行者向け消費税免税制度につき、免税販売の対象となる一般物品の購入限度額を引下げ(1日1店舗当たり「10,000円超」→「5,000円以上」)

 「近年の税制をつくる側は、従来と違って非常にフレキシブルに対応していると評価できます。なので税理士も、現在自分が執務している税の問題について不都合な点や、納税者に不利益な点などがあれば、税理士会の支部などきちんとしたルートを通して意見を出していくことが望ましいと思います」とエールを送る平川氏。

 参加者に多くの気づきを与え、講義を締めくくった。


会計事務所経営研究会