会計事務所経営に役立つ情報
(2015年8月)

「第6回税理士実態調査」統計分析

税務・会計を軸とした高付加価値サービスを

 10年に一度行われる「税理士実態調査」では、過去と現在の業界の違いがよくわかる。

 e-TAXでの申告など、電子化の流れは、誰もが想像しなかった早さで進んでいる。10年前と比べても顧問料や決算報酬が下がり続けていく中、会計事務所に必要なのは誰もができる業務ではなく、顧問先のニーズに応える高付加価値のサービスである。決算時を含めて、経営助言を行っている会計事務所はまだまだ少ない。的確なアドバイスを行うことができれば、他事務所との差別化にもつながるだろう。


半数以上がコンサルティングを行っていない状況事務所を差別化し、高付加価値を与える好機

 経営助言業務についての質問では、「行っていない」が最も多く、その数は63.1%にものぼった。「行っている」と回答したのは29.5%と3割にも満たなかった。多くの税理士は、記帳代行のほかには、独占業務だけを行っており、コンサルティングは行っていないということがわかる。

 経営助言業務を行っている場合、最も多い業務内容(複数回答)は「経営全般」で75.5%。次いで「財務」が66.7%、「労務」16.5% だった。「経営全般」や「財務」については実際の経営上の数字を見ることができる税理士だからこそ、アドバイスをしやすい。また、経営者がこうしたアドバイスを求めていることも多い。

 経営助言業務を行っている場合の業務の報酬については「顧問報酬に含めて受けている」が一番多く84.6%。「単独で受けている」は8.9%だった。「顧問報酬に含めて受けている」場合、通常の顧問報酬と比べてどの程度コンサル料が含まれているのかはこのデータからはわからない。

 だが、付加価値の高いサービスを行うことで、トータル的な顧問料の増加や、顧問先離れに役立っていることは間違いない。

 顧問料の値下げは、止まったと言われているが、これから新規顧客の獲得など、業界内での競争はさらに厳しくなっていくだろう。税理士なら誰でもできる仕事をしていては、それは当たり前のこととして、お客さまはありがたみを感じてはくれない。そうした状況の中、顧問先に対して、ニーズをとらえた高付加価値のサービスを提供することが必要となってくる。

グラフ1 経営助言業務

グラフ2 経営助言業務の業務の報酬


下がり続ける決算報酬のなかで高額ゾーンでは増加傾向

 決算報酬については、20年前、10年前の調査と比べて、全体的に減少傾向であることがわかる。

 「30万〜50万円以下」という価格帯では、20年前で12.3%、10年前も10.7%だったが、今回の調査では7.6%と、初めて10%を下回った。

 「30万円以下」でも、18.2%と前回、前々回と比較して最も低い数字である。

 その分、数字が増加したのは、「20万円以下」「10万円以下」「5万円以下」のゾーンだ。

 「20万円以下」は42.5%で1.7ポイント増、「10万円以下」は20.3%で1.2ポイント増、「5万円以下」は7.6%で0.6ポイントの増となった。このことから、多くの会計事務所で価格下落という大きな波に飲み込まれている様子がわかる。

 ただ、「100万円以上」の高額ゾーンでは、10年前の0.6%から0.9%と0.4ポイント増加しているのだ。景気が多少回復傾向にあるといはいえ、決算報酬額が下落傾向にあるなかで、顧問先にメリットがなければ報酬額が上がることは考えられない。決算時に申告数字を利用した高付加価値のサービスを提供しているからこそ、それが実現するのだ。

 決算時の報酬アップについては、決算カウンセリングを行うことが有用である。数字の苦手な経営者に対し、決算書からわかる会社の強みや弱みを伝えることができ、強力な経営支援にもなる。顧問先とのコミュニケーションの増加にもつながる。経営者が付加価値を感じてくれれば、報酬アップにもつながるだろう。

グラフ3 決算報酬(法人、年額)について

グラフ4 決算報酬(個人、年額)について


会計事務所“勝利の法則”