会計事務所経営に役立つ情報
(2015年5月)

職員がお客様をさくさく増やす
会計事務所のモデリング Part.3


 会計事務所が新規拡大する条件は何だと思いますか?

 それは、所長一人で営業をしないことです。所長単独での営業では限界があり、新規拡大が行き詰まります。コンスタントに新規顧客を獲得するためには、職員にも営業活動を担当してもらうことが必須なのです。

 今回は「初期指導担当」スタッフが営業活動をサポートしているITA大野税理士事務所の事例を紹介します。


「初期指導担当」スタッフが営業活動をサポート

─職員さんに営業を担当してもらったいきさつを教えてください。

大野氏:
HPなどから問い合わせをいただいて、はじめのうちは自分がすべて対応していたのですが、自分が次第に忙しくなると、なかなか都合が合わなくなってきました。はじめに自分の都合を言って、それが合わず、次は先方の都合を聞いて、それでも合わないとなると、成約が危うくなります。そんな状況のときに、職員の田中誠に対応してもらうことにしました。

─田中さんは営業担当という位置づけなのですか?

大野氏:
あくまでも初期指導担当という位置づけです。僕は基本的に実務はせず、全顧問先を職員に担当してもらいます。そうするとどうしても、僕と担当者の間にギャップがあり、顧客満足度が下がってしまいます。

そこで、コミュニケーション能力がある田中が初期指導担当として間に入ることで、サービスのクオリティーを確保します。

─初期指導担当は具体的にどのような業務をされるのですか?

大野氏:
顧問契約が成立すると、各種ソフトの設定や指導をはじめ、保険加入など様々な手続きを伴います。そのために各種資料を整えます。ここが会計事務所業務のボトルネックだと思うんです。

通常の監査担当者に初期指導を任せると、物理的に忙しくなり、クオリティーがどうしても落ちてしまいます。そこで初期指導担当者の出番です。はじめは監査担当者と2人でバックアップして、軌道に乗ると監査担当者に任せるようにします。

また、初期指導担当者は、初期指導をしておしまいではありません。当事務所は基本的にお客様のところを訪問せず、監査担当者が電話やメール等でやり取りをすることが中心になります。すると、どうしてもコミュニケーション不足になりがちです。そうした頃合いを見て、監査担当者がコミュニケーションを補うために、お客様の飲食店を訪問します。

─そこで営業活動をされるわけですか?

大野氏:
本格的な営業はしません。お客様のところに行ったら「お元気ですか」「お知り合いを紹介してください」と言ったり、保険を提案するくらいですよ。飲食店は、火災保険や食中毒保険などさまざまな保険が必要ですからね。

─初期指導担当者を設けたメリットはどんな点にありますか?

大野氏:
事務所のキャリアモデルを形成できた点にあります。当事務所は入所するとまず入力担当になります。そこで法人税の申告までできるようになってもらいます。それから監査担当になり、お客様の月々のフォローを行います。その次のキャリアが初期指導担当です。これによって、職員のモチベーションが上がります。

─ほかには、どのようにして職員さんのモチベーションを高めていますか?

大野氏:
物心両面を満たすことに重点を置いています。こまめに話を聞くことですね。僕は会議とか面談とか形式ばったものが性に合わないので、一緒に飲んだときや同行時の電車の中で話をしています。ときには電話をかけることもありますね。まず「今、楽しい?」と聞いて話を広げています。

─職員さんに営業をお願いするにあたって大事なことは何ですか?

大野氏:
職員さんを承認する気持ちですね。とかく所長先生は自分で全部やってしまいがちです。そうではなく「お前のほうがトークが上手」「お前のほうが営業に向いている」など、自分よりも優れている点を認めてあげることが大事だと思います。

人間は承認欲求が強いものです。認められると想像以上の力を発揮して、事務所の業績に貢献してくれるようになるかもしれません。


 大野先生の取り組みについての詳細は、新作DVD「会計事務所のモデリング」に詳しく収録しています。


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