会計事務所経営に役立つ情報
(2014年5月)

消費税増税後の経営アドバイス

 4月に増税した消費税。増税後3〜6ヵ月は消費が落ち込むことが予想され、顧問先企業はピンチに陥る可能性があるでしょう。そうなると税理士、会計事務所の出番です。今回は中島祥貴税理士・行政書士が「消費税増税後の経営アドバイス」について解説いたします。


消費税増税後の経営アドバイスプロモーションと資金繰りの観点で顧問先を指導

 消費税が8%に増税し、多くの企業が売上を落としていると思われます。しかし、売上が落ちたからといって、黙って見過ごすわけにはいきません。税理士、会計事務所として売上が落ち込まないよう、あるいは落ち込み幅を減らせるよう、アドバイスすることが必要だと思います。

 増税後の経営対策としてすべきことで重要なのは、需要落ち込みの際の営業・プロモーション戦略です。

 営業・プロモーション戦略というと、ほとんどの中小企業がパンフレットやチラシを配布するくらいしか思い浮かばないかもしれません。一方、大企業は需要落ち込みを新たな新商品開発のチャンスと受け止め、いろいろなプロモーションを展開しています。例えばビールです。大手メーカーは買い控えに対してどんな戦略を打っているのか。「プレミアム〜」と称して、商品自体を変えてしまうのです。外見をゴージャス感あるデザインにして、原料の麦芽とホップの量を若干変えます。この程度では、コストはほぼ同じ。バージョンアップすることで消費の落ち込みを防ぐという施策を取っているのです。

 こうしたことを中小企業の顧問先に話すと「大企業だからできるのでは」と言われます。しかし、私は中小企業でも同様のことをできると考えています。

 例えば街の家電屋さんですと、パッケージングという手法が使えます。ポットとオーブントースターというように、商品を組み合わせて値引きして販売します。複数の商品を一度で売れるので、粗利を下げても利益を確保できるはずです。あるいはアップセルといって高機能の商品をすすめて単価を上げるというやり方もあります。 こうしたマーケティングの技術を中小企業の顧問先に伝えることが重要なのです。


5%の感覚で預かった消費税を運転資金に回すと危険

 もうひとつ重要なアドバイスは資金繰りです。

 消費税は5%から8%に上がり、2015年10月には10%に上がるといわれています。例えば年商3,000万円の中小企業の場合、消費税納税額が50万円だったとします。そうすると経営者は「50万円くらい消費税の分としてとっておけばいい」という感覚が定着しています。今回の増税で納税額が50万円から80万円に上がるとどうなるか。今まで通り50万円の感覚のままですと、預かった消費税のうち残りの30万円を運転資金に回してしまいます。これでは、いざ消費税を納税しようとしたときに資金がショートします。

 過去の消費税増税の事例が示したように、9月くらいには消費の落ち込みが回復するといわれています。しかし、この4月からの6ヵ月間は前年対比で売上が落ち込みます。もともと資金繰りが苦しい中小企業の場合、消費税増税は運転資金不足をもたらします。つまり、この6ヵ月間を耐えられる資金繰り対策が必要なのです。

 簡単なところでは、運転資金等の借り入れをあらかじめ行っておくというような対策になろうかと思います。このアドバイスができるのは税理士、会計事務所だけです。そのことを念頭に入れて指導にあたりましょう。

 今回の消費税増税は中小企業にとってピンチである一方、20年に一度の売上が上がるチャンスでもあります。消費税増税後の1年間は、消費動向が読みやすく、この動向に沿って仕入れや在庫の保有を管理することで、利益を出し続ける経営をすることが可能になるからです。

 ほかにも、消費税増税ですべき経営指導のポイントを欄外に記しておきます。顧問先のピンチをチャンスに変えられるよう、適切な経営指導に努めたいものです。


消費税増税時の顧問先指導方法