会計事務所経営に役立つ情報
(2013年12月)

開業10年以上事務所の27.6%が報酬規程がない

 「会計事務書の経営白書2014」より、「顧問料の推移」を見てみよう。

 前年と比べて全体的に顧問料が「上がった」か「下がった」か「変わらない」かをアンケートしてみた。

 ここでの両世代の違いは、顧問料が「上がった」の回答割合。「新人事務所」が9.6%、「ベテラン事務所」は5.5%と、倍近い開きがあった。

 この結果を裏付けているのが「報酬規程の有無」アンケート。実はこのアンケートの結果が両タイプの事務所間のギャップの根底部分を形成しているとも解釈できるだろう。

 ここで特筆すべき点は、報酬規程が「ない」と回答した割合が「新人事務所」が4.8%なのに対して「ベテラン事務所」では27.6%に上っていることだ。実に5倍以上の開きがある。

 平成16年の日税連による「税理士実態調査報告書」では、独自の報酬規程の有無について、以下のような結果が出ている。

●設けている…29%
●設けていない…68%
●無記入…3%

 「調査時から年数が経っている」「アンケートの回答者は事務所経営の意識が高い」という点を勘案しても、実際に報酬規程がない事務所は、全体的に今回の統計よりも実際は多いと考えられる。しかし、「新人事務所」と「ベテラン事務所」のギャップは、実際もさほど変わらないだろう。

 これはどういうことか。報酬規程がないということは、顧問料が実質「言い値」になる。値上げの根拠も値下げの根拠もはっきりしていない。つまり、会計事務所側が顧問先に対して顧問料の値上げを切り出したくても、その根拠を示せないのだ。その上、所長税理士をはじめ会計事務所のスタッフは価格交渉に慣れていないケースが多い。報酬規程がない状態で唐突に値上げを切り出そうものなら、顧問先の反発を受け、逆に値下げを要請されかねない。これからの時代、報酬規程がない状態は事務所経営上大きなリスクなのだ。

 さらに別の調査では、報酬規程が「ある」と答えた事務所のうち、72.3%が昨年よりも顧問先総数を増やしていると答えたのに対して、報酬規程が「ない」と答えた事務所では46.7%と、大きく差が開いた結果となった。

 これは、報酬規程がクリティカルに契約促進に役立っているというわけではなく、事務所内で集客から問い合わせ、問い合わせから成約までの一連のフローが整備されており、その流れのなかで報酬規程が使われていることの現れではないかと予想される。

 一方、報酬規程を用意していない事務所では、40%もの事務所で昨年よりも顧問先を減らしている。

 会計事務所を選ぶ際に相見積もりが当たり前になり、いくつかの事務所の話を聞き比べてから契約へと進む見込み客に、明確な形で顧問料を説明できないと、新規契約を結ぶのは難しいという、昨今の風潮が顕在化した結果となった。

 報酬規程は新規契約だけではなく、顧問料アップの根拠や、会計事務所が行う作業領域の設定など、幅広い役割を果たす。

 まだ、用意していない事務所は、早めに策定するほうが良いだろう。