会計事務所経営に役立つ情報
(2013年11月)

消費税増税による転嫁戦略の重要性

 2014年4月に8%への増税が決まった消費税。引き上げまで半年を切り、各事業主はいろいろと準備が必要になってきました。消費税増税は中小企業に大きな影響を与えます。それをサポートするのは、会計事務所にほかなりません。今回は加藤幸人税理士が「消費税増税による転嫁戦略の重要性」を解説いたします。


消費税8%への増税決定!

 転嫁対策特別措置法は、事業者が適正に価格を転嫁できるようにと国が講じた措置です。転嫁対策は、経営的な観点からも重要な項目になります。

 転嫁戦略では、消費税増税分を価格に転嫁できるかどうかがポイントになります。

 1997年に消費税が3%から5%に増税したとき、多くの中小小売業者が価格転嫁をうまくできなかったという統計が出ています。今回は、短期間に2段階で税率がアップする予定です。取引先との間で総額にて価格交渉をしている企業にとっては、2度の価格交渉、転嫁対策が必要になります。

 また、総額表示では2度の値札の付け替えが必要となます。さらに、増税分の転嫁によって値札の金額も増額しますので値上げととらえられてしまう可能性があります。消費税が上がったことよりも、値段が上がったという印象が強く残り、購入に影響が出る可能性があります。値札の価格が上がっても、実質的な値上げと認識されないような工夫が必要です。

 だからといって、消費税5%込みで105円にて販売していた商品を、8%への増税後も引き続き105円で販売したら、税抜売上100円は維持できず、実質値下げになります。価格転嫁できないということは、単価の引き下げ、売上の減少になるのです。そして売上単価の引き下げは、ストレートに利益の減少につながり、経営そのものに大きな影響を及ぼします。

消費税3%UPを価格に転嫁できない場合

 上図には消費税の3%アップ分を価格に転嫁できない場合の利益と資金繰り例を示しています。8%への税率変更分の消費税が、仕入には転嫁されており、売上には転嫁できずに従来の税込金額のまま据え置きで販売すると、このケースで利益率が2.3%落ち、手元の現金は13.8%も減少してしまうのです。

 その際に消費税増税前と同じだけの利益を確保しようとするならば、経営努力が必要となります。

●販売数量の増大
●仕入原価の削減(仕入先変更、単価交渉、ロットの拡大等々)
コスト削減(大きな金額の見直し、固定費の見直し、「ちりも積もれば」の徹底した取り組み等々)

 このような経営努力によって利益を確保することが求められます。顧問先には、消費税増税分を価格に転嫁できないことが、経営に大きなインパクトを与えるということを強く認識してもらう必要があります。


価格表示が適正かの確認を

 消費税増税において、会計事務所が顧問先に指導すべきことのひとつに「価格表示が適正に行われているかの指導」が挙げられます。

 価格の表示は実にいろいろな所に現れます。「こんなところにもあった」というような意外な箇所にも存在します。たとえば以下のような例が挙げられます。

●値札、商品陳列棚、店頭表示
●チラシ、パンフレット、カタログ
●看板、ポスター
●新聞雑誌等の広告物
●ホームページ、通販サイト

 これらの媒体には商品・製品の値段がついている可能性があるので、すべての価格表示箇所を確認するように顧問先に伝えましょう。

 総額表示を採用する場合の2度の価格表示への対応や、そもそも外税表示に変更するかの相談対応など、消費税増税の経営対策においても顧問先の経営に寄与してもらえればと考えます。