会計事務所経営に役立つ情報
(2013年7月)

日米の会計業界に横たわる最大の違いはマーケティング力

人材獲得競争が顕在化採用関連サービスが登場

 突然だが、アメリカの会計業界における事務所規模の定義についてご存知だろうか。

 職員を20数名抱える事務所は、日本でならば「そこそこの大きさの中堅事務所」と呼ばれるだろう。しかし、アメリカでは小規模事務所なのだそうだ。

 中規模事務所とは80名程度の職員がいる事務所で、大規模ともなると数百名の職員を擁する事務所を指すという。

 今回の展示会において、会計事務所の採用関連のサポート・サービスがいくつか現れた。需要があるところに供給は生まれる。人材確保をサポートするサービスが生まれたということは、採用に悩む小〜中規模の会計事務所が出始めたということだ。

 会計業界の二極化が進み、顧客と優秀な人材の両方を手にする巨大事務所と、顧客と人材を奪い合う小規模〜中規模クラスの事務所が現れると予想してきた未来がついに幕を開けた瞬間といえるだろう。

 この波はアメリカだけではなく、今後必ず日本にもやってくると考えている。顧客の奪い合いや顧問料の維持だけではなく、優秀な人材の獲得競争や引き抜き合戦が顕在化していくのだ。

 膨大な予算と規模、優秀な人材を持つ巨大な事務所に小規模〜中規模の事務所がどうやって立ち向かっていくのか。その覚悟はできているのか。私はその答えのひとつはネットワークの構築とブランディングだと考えている。


なぜアメリカには税理士紹介サービスがないのか?

 アメリカの会計業界には、いわゆる「税理士紹介サービス」が存在しないそうだ。この話を今回のAAMサミットの会場で聞いたときには驚いた。日本では百花繚乱花盛りの様相を呈しているではないか。

 昨年、弊紙でも紹介サービスについて調べてみた。インターネットでざっと検索しただけでも、120社を超える業者が参入していた。今はもっと増えているかもしれない。

 ゼロ対120。この違いは一体どこにあるのだろうか。

 アメリカのCPAには、それぞれ自分たちの事務所で集客するということが根付いている。マーケティングを行い、集客した見込み客を顧客にするまでのフローが確立されているのだ。だから紹介はいらない。自分たちで顧客を獲得できるからだ。

 マーケターとビジネスディベロッパーを事務所内に置き、別々に活動させているという点など、この事実を裏付けるに十分だ。

 しかし日本ではマーケティングの重要性を感じている会計事務所は数少ない。弊社ではこれまで、会計事務所の重要性についてお伝えしてきたが、残念ながらまだまだ力が及んでいない。多くの会計事務所は魚の釣り方、つまりマーケティングを学ぼうとはせず、直接、魚を欲しがる傾向にある。

 魚を欲しがり税理士紹介サービスに人気が集まる日本と自ら魚を釣る方法を学んでいるアメリカ。こうした点にアメリカとの違いを感じ、私は危機感を覚えるのだ。今一度、私たちとともに会計事務所のマーケティングについて考えていこうではないか。

 これから訪れる会計業界の二極化の進行とその影響から、事務所を守り成長させるためにはマーケティング力は絶対に欠かせない。

 今回のAAMサミットに参加して、その思いを新たにした。