(2013年3月)
事業承継の際に起こりうる人的トラブルとは? 企業の事業承継を行うにあたって大切なのは何か。税理士ならば、真っ先に思い浮かぶのは自社株対策です。しかし、それだけでは不完全なことも実感しているはず。事業承継問題を解決するには「ヒト」からのアプローチが欠かせません。事業承継は「ヒト」に大きなリスクがあり、トラブルの元凶になっているからです。 今回は宮子智子氏が「ヒトからアプローチする事業承継」について解説します。 事業承継のアプローチは「ヒト」から! 「ヒトからアプローチする事業承継」とはどういうことでしょう。現社長が病気や身体の衰えから引退したり、あるいは死亡して事業承継が行われるときに、以下のような事項が社員から申し立てられるケースがあります。 ●実はサービス残業(未払賃金)があるので払ってほしい ●(コア社員が)実はこれを機に退職したい ●実はこのアイデアは私のものなので、著作権を買ってほしい ●実は前社長が「この役職にする」「いくらの年収に引き上げる」と約束してくれていた ●実はセクハラ(パワハラ)を受けていたので損害賠償請求したい このように、事業承継を機に「今まで言えなかったんだけど実は…」と告白する社員が続出し、問題が表面化し、事故へと発展するケースが多いのです。 なぜ事業承継をきっかけに人的トラブルが起こる? なぜ、事業承継をきっかけに人的トラブルが起こるのでしょう。その理由のは、以下の3つが多いと考えられます。
現社長が元気なときだからこそ諸問題を解決する必要がある 多くの社長は「わかってはいるけれど、それなりに会社がうまく回っているし、社員も一生懸命働いてくれている。何も今そんなところに手をつけなくてもいいのでは」と考えています。一方で、「自分が元気でリーダーシップをとっているときにこそ、トラブルの種となる諸問題を解決できる」とも考えています。 現在、事業承継を考えている社長は、この2つの考えがシーソーのように動いている状態といえるでしょう。この膠着状態を断ち切るのが「ヒトからアプローチする事業承継」なのです。 今は会社がなんとか回っているけれど、事故が起きるとお金にかかわり、会社の存続にも影響します。「ここを一緒に解決しましょう」と説得力のある提案ができるのは、社長の一番近くにいる税理士先生ではないでしょうか。「会社をきちんと残したい」「かわいい社員たちの雇用を守りたい」「自分の身内に会社をしっかりと継がせたい」と思っている社長に対して「事業承継の際はこういった事故が起こります」「こんな可能性がありますよ」と説明し、「だから一緒に解決しましょう」と提案することで、迷っている社長の背中を押すことができます。 事業承継が必要な顧問先を多く抱えている税理士先生は、起こりうるヒトに関するトラブルの可能性からアプローチして問題解決を提案してみてはいかがでしょう。 |