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海外での契約調印

(2016/08/24)

 印紙税を免れるためには、課税文書を国外で作成すればよいといわれることがある。例えば、外国企業との契約を、印紙税のない国で調印することにすれば、印紙税を納める義務から逃れることができるということから、銀行等の調印式は海外でよく行われるといわれている(三木義一=前田謙二『よくわかる国際税務入門』246頁(有斐閣2008))。

 これは、印紙税法3条《納税義務者》を、課税文書を国内で作成した場合にのみ適用されると解釈しているからである。 ところで、同条は、「課税文書の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。」と規定するのみである。これを国内で課税文書を作成した場合にのみ印紙税が課税されると解釈するのは、租税法の地域的限界によるものであろう。 この点、印紙税法基本通達49条《作成場所が法施行地外となっている場合》は、「文書の作成場所が法施行地外である場合の当該文書については、たとえ当該文書に基づく権利の行使又は当該文書の保存が法施行地内で行われるものであっても、法は適用されない」と通達している。

 ただし、たとえその文書に法施行地外の作成場所が記載されていても、実際には、法施行地内で作成されたものであった場合、法が適用されるのは当然である。

 
(出所:酒井克彦・税のしるべ平成23年12月19日号)