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非上場株式等に係る納税猶予と遺産取得

(2016/05/17)

 明治38年に採用された当時、我が国の相続税法では遺産課税方式の体系が採用されていた。しかしながら、その後、昭和33年の改正において、遺産課税方式と遺産取得課税方式の折衷とされ、現在に至っている。もっとも、財産取得者の担税力に着目して課税されていることや、法定相続分どおりに相続した場合と同額の相続税額としていることなどからすれば、実質的には遺産取得課税方式が採用されていると思われる。

 そうであれば、非上場株式等に係る納税猶予制度についても、遺産取得課税方式的に財産の取得者側の要件のみ規定すべきとの意見もある。

 なるほど、例えば、相続の場合、相続開始後5か月以内に代表者であること、取得後に議決権の50%超の株式を保有することなどの財産の取得者側の要件にとどまらず、被相続人の要件として、会社の代表者若しくは代表者であった個人で、その者と特別の関係がある者とともに議決権の50%超の株式を保有し、かつ、その筆頭者であった者であることとされている。これに対し、遺産取得課税方式を採用するドイツでは、株式を保有していた被相続人等に係る要件はない。

 この点は、我が国の同制度が相続税法本法の規定ではないことと関わりがありそうである。

(出所:酒井克彦・税のしるべ平成26年3月3日号)