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ニュー・パブリック・マネジメントと租税
(2015/12/10)

 ニュー・パブリック・マネジメント(New Public Management)は、イギリスにおいて提案された行政改革の基礎的な考え方として注目を浴びている。

 例えば、独立行政法人、指定管理者制度、市場化テスト、PFIなどがそれである。そこでは、市民を公共サービスを受ける客体(顧客)として捉え、行政は顧客たる市民の満足度を高めるように最大限の努力をすることが求められる。

 その際に称揚される価値観はValue For Moneyである。これは支払った金額に見合うサービスの要請を意味する。すなわち、市民は納税額に相応しい行政サービスを受ける権利があり、行政はかようなサービスを提供する義務があるという考え方である(「読書の窓」平成25年10月号参照)。

 これは、行政と市民との関係において、納めた税金に見合うサービスを提供せよ、との要求に繋がり得る捉え方であるともいえ、また、サービスに見合う税金を納めよ、との要求として捉える考え方にも接合し得る。

 このような租税に対する見方は、およそ我が国における租税の捉え方の一般的理解からは遠い。租税とは何かを定義することは難しいものの、少なくともサービスとの間の対価性はないものと考えられているからである。

(出所:酒井克彦・税のしるべ平成26年1月20日号)