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公認会計士A事務所事件
(2015/11/10)

 Y(被告)が経営する公認会計士事務所において勤務していた](原告)が、Yから平成20年6月に解雇されたが、当該解雇は無効であるとして、(1)]が税理士資格を取得した後における雇用契約上の権利の確認、(2)賃金及び賞与並びに遅延損害金の支払、(3)慰謝料等の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案がある。

 東京地裁平成23年3月30日判決(労働判例1027号5頁)は、]とYの関係は、]の税理士資格取得に伴い、雇用契約から委任もしくは準委任契約又は請負契約に変更されたものと認めることはできず、平成20年の契約解除の当時も、XとYとの間の契約は雇用契約であったと認められるとした上で、慰謝料等の損賠賠償について棄却している。

 Xも、公認会計士事務所の顧客に対し、副所長の逮捕が近いなどと公認会計士事務所との信頼関係を破壊する発言をしていたことが認められることなどからすれば、本件解雇が]の権利、利益を侵害するものとは認められないとした。

 税理士資格の取得が雇用契約関係を変更するものではないとの説示は重要である。また、事務所内における事務員と経営者との間の契約関係の基礎にある信頼関係が崩壊した事例としても、注目される事案である。

(出所:酒井克彦・税のしるべ平成25年11月18日号)