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申告の代理
(2015/10/29)

 確定申告が参政権としての性質を有するといわれることがあるが、そうであるとすると、「申告」を第三者が代理することは許されるのであろうか。

 この点については見解の対立がある。確定申告の第三者による記載や代筆は事実上の行為の代行であり、納税額の決定という意思表示そのものの申告の代理は税理士といえども行い得ないのであるから、税理士法2条にいう「税務代理」とは、あくまでも代理という意味ではなく、代行という意味にとどまるとする考え方があり得る。

 この見地からすれば、確定申告書に署名が必要とされるのは、代行であることから納税義務そのものを成立させるためには納税者本人の意思決定を要するところ、確定申告書の「署名」は、かかる決意の表明を示すものであるというのである。

 他方、確定申告は納税者たる私人が単にそれを具体的に確認し、その結果を税務官庁に通知する公法行為であるにすぎず、何人が課税要件事実を確認しようと、理論的には同じであるべきはずのものであるから、代理に親しまない行為であるということはできないとする見解がある。後者の考え方に従えば、税理士を納税者の代理人として位置付けることがより可能になるのである。

(出所:酒井克彦・税のしるべ平成25年11月11日号)