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不確定概念の内包と外延
(2015/10/09)

 租税法の解釈は、できるだけ文理に従って行い、みだりに拡張したり縮小したりすることがあってはならないといわれている。これは、租税法律主義の帰結であって、課税庁の恣意的な課税を排除し、また、納税者による自己に都合のよい法の適用を排除するという意味でも重要な考え方である。

 租税法律主義は、課税要件明確主義を要請するものではあるが、不確定概念が必要とされることは法技術的には避けがたいところである。概念とは、そもそも、法的判断の構成要素となるものであるが、であるからといって、概念理解の統合が直截に法的判断の唯一のよりどころとなるものではない。概念の理解は、その概念の文字上の意味にとどまらず、その概念の使われている条文の体系的な位置付けや条文の趣旨目的などを総合して行うべきである。

 概念の核となる意味内容を「内包」といい、その概念の適用領域を「外延」というが、内包が貧しければ、外延は広がり、その逆に、内包が豊かになれば外延は狭くなる、と理解されている。内包を画するものが「定義」であるが、上記の不確定概念は通常定義されておらず、また、内包の乏しいものである。内包の乏しさの程度によっては、租税法律主義を脅かすことにもなるのである。

(出所:酒井克彦・税のしるべ平成25年11月4日号)