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消費税法上の「帳簿」の意義
(2015/08/25)

 消費税法58条《帳簿の備付け等》は、「事業者又は特例輸入者は、…帳簿を備え付けてこれにその行った資産の譲渡等又は課税仕入れ若しくは課税貨物の保税地域からの引取りに関する事項を記録し、かつ、当該帳簿を保存しなければならない。」と規定している。すなわち、「事業者は、帳簿を備え付けて、これに課税仕入れに関する事項を記録し、かつ、当該帳簿を保存しなければならない」のである。

 ところで、消費税法30条《仕入れに係る消費税額の控除》8項は、「前項に規定する帳簿とは、次に掲げる帳簿をいう。」として、その1号で「課税仕入れ等の税額が課税仕入れに係るものである場合には、次に掲げる事項が記載されているもの」と規定している。つまり、必要事項を記載したものが「帳簿」であると規定している。

 この2つの条項をみると、消費税法は、必要事項を記録したもののみを「帳簿」と定義している一方で、かかる帳簿に必要事項を記録することを要請している。これらの規定は、一見すると循環論に陥っているのではないかという疑義がある。この点をいかに整合的に理解するかについては、解釈に委ねられている。

 すると、かかる法の文理のみならず、法の趣旨に合った解釈が求められるところ、課税仕入れの具体的事実を明らかにする程度の帳簿であることは必要であろう。

(出所:酒井克彦・税のしるべ平成25年8月5日号)