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圧力団体と税理士
(2015/07/10)

 選挙における投票行動は代表的な政治参画手段の一つである。もっとも、政治参画の手段は何も選挙に関わるものだけに限らない。人々の政治的欲求を満たすための行動形式には様々なものがある。

 圧力団体によるロビー活動もその一つだ。ちなみに、圧力団体とは、本来、政治上の目的を実現するために、外部から政府や議会・政党などに働きかける集団として肯定的な意味で捉えるべきものである。

 ところで、企業や事業者は業界団体に所属していることが多いであろうし、労働者は労働組合等を通じて圧力団体への参加が考えられる。それぞれの団体の目的に応じた要望が、圧力団体を経由して立法に反映されることはあろうが、例えば相続税の改正提案などを前提に考えると、納税者の税制に対する要望を繋ぐような圧力団体というのは想定しづらい。

 圧力団体を持たない納税者らの意見については、その声を十分に汲み取って立法に反映させることはなかなか難しい。そこで、このような状況において、それらの圧力団体に代わるものとして税理士にその役割を期待することが考えられる。

 普段から多くの市民と接触を持つ租税専門家である税理士の新たなる社会的役割として、この点についての認識がより強調されても良いように思われるのである。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3076号4頁)