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正規の簿記と複式簿記
(2015/06/25)

 所得税法施行規則57条《取引の記録等》は、青色申告者は、青色申告書を提出することができる年分の不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額が正確に計算できるように資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を「正規の簿記の原則」に従い、整然と、かつ、明りょうに記録し、その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならないと規定する。

 他方、法人税法施行規則53条《青色申告法人の決算》は、青色申告法人は、その資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、「複式簿記の原則」に従い、整然と、かつ、明りょうに記録し、その記録に基づいて決算を行わなければならないとする。

 すぐに気づく点であるが、所得税法上の青色申告者には、「正規の簿記の原則」が、法人税法上のそれにおいては、「複式簿記の原則」が要請されている。これは、それぞれの法の求める青色申告制度との関係に由来する。すなわち、所得税法上は、正規の簿記の原則に従っていればよいので、すなわち、記録の網羅性、検証可能性、秩序性が充足されていることが求められており、その記帳方法が必ずしも複式簿記に限らず単式簿記であることも想定されているというわけだ。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3072号4頁)