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「レ・ミゼラブル」の背景と塩税
(2015/05/25)

 映画「レ・ミゼラブル」は、1789年のフランス革命が背景のビクトル・ユゴーの「ああ無情」が映画化されたものだ。

 フランス革命が封建制度を打破した民主主義革命であることは万人の知るところであるが、この革命は、急進思想を父とし、財政の破綻を母とするといわれることもある。

 とりわけ、財政の乱脈ぶりは激しく、王の高利貸しに対する借金が嵩んだことから農民や市民への増税が重く課されていたことが革命の機縁となったわけだ。

 例えば、当時のフランスには塩税と呼ばれるものがあった。

 「大塩税区」とされるところでは、家族1人当たり最低消費量の塩の分量が決められ、一定の塩を義務的に買わなければならなかった。貧困階層にはこの負担が極めて重くのしかかっていたという。

 「小塩税区」では、かような義務塩制度はなかったものの、それだけの分量の塩を購入しなければ密輸入塩を使っているのではないかとして追求されていたようである。

 このような義務塩制度は徴税請負制度の産物だと説明されているが(遠藤湘吉「革命と税金」財政18巻13号72頁)、このような重税が革命の呼び水になったことは間違いなさそうである。

 「レ・ミゼラブル」で描かれている貧困階層は重税に苦しんでいたのだ。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3064号4頁)