タックス・ラウンジ
バックナンバー

IFRS翻訳
(2015/05/08)

 田中弘教授の論文によると、中国でIFRSを企業会計準則に盛り込むに当たって、fairvalueを「公正価値」と訳したところ、公正価値測定の自由度の高さを悪用した会計不正が頻発したため、次に「公認」を意味する「公允価値」という訳語を使うようになったという。

 「公允価値」といえば、fairvalueの中身を中国財務部のような公的機関が認めるものに限られることになるという理解がその背景にあるようである(田中「IFRSを超えて」税経通信67巻15号46頁)。

 このような例が示すように、IFRSを自国語に翻訳して適用する国々では、(1)翻訳の段階で、(2)翻訳されたIFRSを各企業が解釈する段階で、(3)さらにその翻訳バージョンを各企業が適用する段階で、ばらつきが生じるおそれがあるといえよう(田中・前出稿)。

 世界標準的基準がいかに適用されていくかという問題には、今日極めて強い関心が寄せられている。この問題は、ひとり日本における翻訳問題にとどまらず、他国における翻訳をも考慮して、それらとの比較において他国がいかなる適用をしているかという点にも関心を寄せるべきとの、田中教授の指摘を学究者及び実務家は重く受け止めるべきであろう。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3062号4頁)