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東洋的租税観念
(2015/04/10)

 日本政府の租税行政について書かれたGHQ経済科学局長マーカットにより準備されたスタッフ・スタディ文書によると、その程度は減りつつもなお不適切、非能率、不公平かつ恣意的であると評価されている。その原因の1つとして、職員の多くが若く経験を欠いていることや有能な人材が実質的に欠けているという点が指摘されているが、他方で、東洋的な租税観念があることも指摘されている。

 この東洋的な租税観念により、徴収担当者に無制限の全権があり、納税者の側には実質的な異議申立ての権利がないこと、徴税目標制度が存在していて、各税務署は経済状況の如何にかかわらず徴税目標を達成することが期待されているなどの観点から租税行政が歪んでいて、そのことから納税者の自発的な協力が全くみられないという事態を招いているというのである。

 自発的に納税者が租税行政に協力をしないというものが東洋的な租税観念だとは思えない。そもそも、そのような租税観念が存在していたのかについては留保せざるを得ないが、徴税当局側の姿勢が納税者の自発的な協力を引き出すことにもなり、他方で協力をしないという硬直的態度を招来することにもなるという視点は重要であるように思われる。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3058号4頁)