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支払遅延の給与に係る所得税
(2015/02/10)

 昨今、中小企業では、給与の支給が遅延するケースがしばしば見られる。所得税法上、給与の支給を得た場合には給与所得につき、源泉徴収がなされることになっている(所法183)。この場合、支払うべきことが確定した給与等の額に応じて源泉徴収の計算がなされることとされており、かかる支給が遅延していたとしても未払い給与もこれに含まれると解されている。しかしながら、法が「べき」と規定しているからといっても、確実に支給されるかどうかは分からない。

 そもそも、昭和15年法においては、甲種の勤労所得と甲種の退職所得については、収入金額という用語を用いることなく「其ノ支払ヲ受クベキ金額」という表現を用い、ここにいう「受クベキ」とは実際に支払を受ける金額をいうものと解されていた。

 現行所得税法は、「収入」という用語を使用することにより、収入する権利の確定した金額を収入すべき金額とする構成を採用している(権利確定主義。所法36(1))。

 給与等の源泉徴収に関しては、現金主義に類似した構成をすることを考えてはどうかという提案もある(碓井光明「給与・退職手当の支払遅延と所得税」ジュリスト842号174頁以下)。されば、徴収上の取扱いに合致することになろう。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3040号4頁)