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我妻栄「民法」と金子宏「租税法」
(2014/12/25)

 戦前、我妻栄博士が執筆し、戦後に有泉享教授との密接な協力作業によって生まれ変わった『民法』は、小型でパワフルであることに加えて、小回りが利くところが日産自動車のダットサンに似ているとして「ダットサン民法」との愛称が付いた。

 我妻博士はダットサンに乗っていたとされているが(成富信夫「我妻君の人となり」ジュリスト563号135頁)、清水誠教授は、一粒社版がダットサンブルーだった点に関心を寄せた(清水誠「ロシア語になった『ダットサン民法』」ジュリスト828号199頁)。清水教授によるとソビエト科学アカデミー「国家と法研究所」エル・オー・ハルフィナ教授の監修によりロシア語に翻訳された同書については、かなり大幅な3分の1ほどの省略があることや、部分的に疑問のある翻訳が見られるなど、不満もみられるそうである。

 さて、我が租税法学において、日本を代表する最も著名な教科書といえば、金子宏教授の『租税法』(弘文堂)が挙げられる。これも他国において翻訳がなされているようであるが、私の研究室の棚にも中国語の『日本税法』(法律出版社2004)がある。金子教授の『租税法』は、版を重ねてより重厚になっている。同じ日産自動車でいえば、気品と重厚さにあふれるグロリアあたりであろうか。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3033号4頁)