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調査における録音テープ
(2014/08/25)

 整理されていない税務調査を巡る法律問題は依然として多い。例えば、調査の際に無断で録音されたテープは証拠能力を有するか、という問題などはその一例である。

 東京高裁昭和52年7月15日判決(判時867号60頁)は、無断録音テープの証拠能力につき、「民事訴訟法は、いわゆる証拠能力に関しては何ら規定するところがなく、当事者が挙証の用に供する証拠は、一般的に証拠価値はともかく、その証拠能力はこれを肯定すべきものと解すべきことはいうまでもないところであるが、その証拠が、著しく反社会的な手段を用いて、人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたものであるときは、それ自体違法の評価を受け、その証拠能力を否定してもやむを得ないものというべきである。そして話者の同意なくしてなされた録音テープは、通常話者の一般的人格権の侵害となり得ることは明らかであるから、その証拠能力の適否の判定に当たっては、その録音の手段方法が著しく反社会的と認められるか否かを基準とすべきものと解するのが相当である。」とする。

 証拠収集行為の違法性の程度によって、その証拠能力を判断する立場であるが、違法性の程度が人格権を侵害するような場合には証拠能力が否定されると解されよう。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3037号4頁)