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濡れ衣
(2014/07/25)

 東京三弁護士会合同代用監獄調査委員会というところが出している『ぬれぎぬ・こうして私は自白させられた』(星雲社1984)という書籍に触れた。

 無実の人が有罪判決を受けるに至った経緯や原因が詳細に記述されている。

 濡れ衣が問題となるのは、何も刑事事件だけではない。ある税理士に依頼をした納税者が、その税理士の隠ぺい・仮装行為により重加算税を課された事例がある。

 この事件の控訴審において、重加算税の賦課決定を受けた納税者(控訴人)は、「D税理士は、控訴人から、平成2年分の所得税の申告及び納付の手続を受任し、1,800万円を預かり、控訴人について虚偽の転入通知をし、E税務署員が課税資料を廃棄する方法により、控訴人の所得税申告を妨害し、1,800万円を横領したのであり、控訴人は、不正行為に巻き込まれ、濡れ衣を着せられたのである」と主張していた。

 なお、この事件は、差戻上告審最高裁平成20年3月27日第一小法廷判決(税資257号順号10855)まで争われたが、最終的に重加算税賦課決定は違法とされ、過少申告加算税についても「正当な理由」があるとして課されなかった。

 まさに、「濡れ衣を着せられた」との納税者の主張が通ったという事件であろう。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3026号4頁)