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租税広報活動と騒音問題
(2014/05/26)

 税金の重要性を広く国民に啓蒙することには大きな社会的意義がある。

 すなわち、租税が国の財政にとってどのような意義を有しているか、租税が国民生活にどのように還元されているか、国民の各階層がどのように租税を負担しているかなど、現代民主主義国家における租税の意義、福祉国家における租税の重要性などに対する国民一般の理解を深めることは、国民の納税義務に対する自覚を高め、もって国民が社会に対して自主的な参画意識を持つことにつながるからである。

 そのため、租税行政当局は各種の広報活動を展開しているが、商店街でのスピーカーを利用してのそれもなされている。しかし、これが紛争の元になることもある。

 東京高裁平成3年3月14日判決(税資182号616頁)では、K税務署がスピーカーを利用して納税に関する放送を行ったことにより、騒音被害に苦しんでいるとする住民が、スピーカーが道路法、有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律等に違反して設置された違法なものであるなどとして、金100万円の慰謝料の支払を国側に求めていた。

 判決では、音量が受忍限度を超える違法なものではないとして請求を排斥している。広報活動にも様々な障壁があるようだ。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3024号4頁)