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「税務署」と「税務署長」
(2014/04/25)

 税務署と税務署長のいずれかは国家機関である。

 さて、どちらが国家機関であろうか。答えは、「税務署長」である。

 税務署長は、所管の事務につき国の意思を決定し、これを外部に表示する権限を与えられた国の機関であり、官庁である。つまり、税務署長は官庁として自ら国家の意思を決定し、その決定を表示するために、これらを行うための準備的調査を行うのであるが、各種の事務に従事する多くの補助機関や物的設備が必要となる。

 ここにいう補助機関や物的設備を総じて「税務署」と指称しているのである。

 鳥取地裁昭和24年6月8日判決(税資1号10頁)が、「税務署長は国家の機関として所管の国家事務につき国家の意思を決定しこれを表示し得る権限を與えられているから官庁であり行政庁であると言うべきであるけれども税務署そのものは国家事務を行うに必要な一つの人的及び物的の設備の全体であっていわゆる官署に過ぎないから国家の機関でもなく又右のような権限を何等有していないので官庁でも行政庁でもあり得ない。」と説示しているとおりである。

 すなわち、「税務署長」が官庁であり行政庁でもあるのに対して、「税務署」は、官庁でもなければ行政庁でもないのである。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3021号4頁)