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所得格差と相続税
(2014/02/25)

 今日、相続税の今後の方向性を示唆するいくつかの問題意識が示されている。

 そこでは、(1)相続税課税の発生割合が4%に減少しており相続税の資産再分配機能が低下していることや、(2)公的な社会保障制度の充実が高齢者の資産形成を支援しており、その資産の一部を今一度社会に還元することで、給付と負担の調整に貢献することができることが指摘され、相続税の資産再分配機能の回復が重要であるとされている。

 現下の格差社会問題を前にすると、経済のストック化が特に高齢者世帯に資産蓄積をもたらす中で、高齢者世代内に発生している資産格差が相続を経て次世代に引き継がれる可能性が高いことを看過することはできない。

 高齢化社会の進展により相続開始時期の発生が遅れているのは事実であり、そのことは同時に相続人自身による資産形成の時間がより長く与えられることをも意味するが、そうであるとすれば、生活基盤の形成を相続財産に頼るという従来的な考え方の希薄化につながっているはずである。

 すなわち、このことは相続税に係る担税力を有する層の拡大をも意味するといえよう。

 相続税の機能回復は、自己責任の及ばない子供の世代にまで所得格差を継承させないという政策的意義をも有することにつながろう。

(出所:酒井克彦・税のしるべ3011号4頁)