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私法人も「行政庁」?
(2013/11/25)

 行政事件訴訟法によると、取消訴訟などの抗告訴訟とは、「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」をいうとされている(行訴法3(1))。

 したがって、行政庁が行った処分に不服がある場合には、抗告訴訟を提起することができるのであるが、ここにいう「行政庁」とは何を指すのであろうか。

 「行政庁」というからには、行政機関としての、国や地方公共団体のことを指すように思えるが、それだけであろうか。

 一般に行政庁とは、「国又は公共団体の意思を決定し、これを外部に表示する権限を有する行政機関」と説明されている(金子宏ほか『法律学小辞典〔第4版補訂版〕』229頁(有斐閣2008))。

 いわゆる赤ちゃん斡旋をした医師に対して、人工妊娠中絶を行うことができる医師の指定を取り消した都道府県医師会の行った処分が、「行政庁の行った行政処分」に当たるかどうかが争われた事例において、裁判所は、「国又は公共団体から公権力の行使の権限を与えられている機関」であれば、私法人であっても「行政庁」に当たるとして、医師会を「行政庁」と判断している(最高裁昭和63年6月17日第二小法廷判決・訟月35巻3号504頁参照)。

 このように私法人であっても「行政庁」に当たることがあるのである。

(出所:酒井克彦・税のしるべ2946号4頁)