重要租税判例ガイド
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東京地裁平成25年2月22日判決(判例集未登載)
―租税特別措置法70条1項の適用と同条5項が定める一定の書類の添付要件―
(2014/11/10)

1.事案の概要

 本件は、原告Xらが、本件被相続人が平成20年12月18日に死亡したことによって開始した相続により取得した財産の一部を財団法人(当時)等に贈与したとして、このような法人等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税等について定める租税特別措置法(以下「措置法」という。)70条1項の規定を適用した内容の相続税の申告をしたところ、S税務署長から、当該申告に係る申告書に同条5項所定の書類が添付されていなかったから、同条1項の規定の適用はないなどとして、本件各更正処分等を受けたため、それらの取消しを求めた事案である。


2.争 点

 本件の争点は、本件各贈与につき措置法70条1項の規定の適用があるか否かである。


3.判決の要旨

 東京地裁平成25年2月22日判決は、大要次のとおり判示して、Xの請求を棄却した。

 すなわち、同判決は、国等に対して相続財産を贈与した場合等に相続税を非課税とする旨定める措置法70条について、同条1項は、「相続等により財産を取得した者が、当該取得した財産を当該相続に係る申告書の提出期限までに国や地方公共団体、公益財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人のうち、教育若しくは科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに贈与をした場合に、一定の例外を除き、当該贈与をした財産の価額は当該相続等に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入しない旨を定めるところ、これは、相続等により財産を取得した直後にされる公益財団法人等への当該財産の贈与が被相続人の意思等に基づくものである場合が多いことや、我が国においては、民間の事業による教育や科学の振興、社会福祉の向上等が重要であり、法人税法や所得税法においても公益財団法人等の一定の公益法人に対する贈与に係る寄附金の控除が認められていることに鑑み、政策的な観点から、相続税においても、当該贈与をした財産については課税をしないこととしたものであると解される。」とした上で、「同条5項は、同条1項の規定は、その適用を受けようとする者の当該相続等に係る同項に規定する申告書にその規定の適用を受けようとする旨を記載し、かつ、同項の贈与をした財産の明細書その他財務省令で定める書類を添付しない場合には、適用しない旨を定めており」、これを受けた読み替え後の旧措置法施行規則23条の3第4項は、一定の書類のほか、旧主務官庁等が一定の事項等を証明した書類と定めているところ、「このように証明書の添付を要することとしたのは、措置法70条1項の規定を適用するためには、当該贈与を受けた法人が同項の規定の適用を受けることができる法人に該当するものであるかの判断を要するが、課税庁にとってその判断は必ずしも容易ではなく、また、同項の規定の統一的な適用を図る必要があることから、上記に述べた同項の規定の趣旨を踏まえ、所定の証明書を相続税の申告書に添付した場合に限り、同項の規定を適用することとしたものと解するのが相当である」と判示した。

 そして、同判決は、本件においては、Xらは、本件相続に係る相続税の申告に当たり、措置法70条5項所定の書類のうち旧主務官庁の証明書等を添付しなかったものであり、また、同条1項の規定の適用に当たり、その関係法令において、同項に規定する申告書の提出期限を経過した後に同条5項所定の書類が追完された場合に同条1項の規定の適用を認める旨の規定は見当たらないから、本件相続に係る相続税の申告において、本件各贈与につき同項の規定を適用することはできないものというべきであると判示した。

(執筆:一般社団法人アコード租税総合研究所)