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東京地裁平成24年6月21日判決(判例集未登載)
―庭内神しの敷地等は相続税法上の非課税財産に該当するか―
(2014/04/09)

1.事案の概要

 原告Xは、被相続人に係る相続税につき、相続財産である土地のうち、弁財天及び稲荷を祀った各祠(以下、両者を併せて「本件各祠」という。)の敷地部分(以下「本件敷地」という。)を相続税法(平成19年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)12条1項2号(以下「本件非課税規定」という。)の非課税財産とする内容を含む申告及び更正の請求をしたところ、税務署長は、納付すべき税額を申告額よりも減じるものの、本件敷地は非課税財産に当たらないとしてこれについての課税をする内容を含み、本件更正の請求に係る税額を上回る税額とする減額更正処分を行った。

 Xがこれを不服として、本件敷地が非課税財産に該当するなどと主張して、被告国Yに対し同処分の取消しを求めた。


2.争 点

 本件敷地の非課税財産該当性。


3.判決の要旨

 東京地裁平成24年6月21日判決は、本件非課税規定にいう「これらに準ずるもの」の意義について、「その文理からすると、『墓所』、『霊びょう』及び『祭具』には該当しないものの、その性質、内容等がおおむね『墓所、霊びょう及び祭具』に類したものをいうと解され、さらに、相続税法12条1項2号が、…祖先祭祀、祭具承継といった伝統的感情的行事を尊重し、これらの物を日常礼拝の対象としている民俗又は国民感情に配慮する趣旨から、あえて『墓所、霊びょう又は祭具』と区別して『これらに準ずるもの』を非課税財産としていることからすれば、截然と『墓所、霊びょう又は祭具』に該当すると判断することができる直接的な祖先祭祀のための設備・施設でなくとも、当該設備・施設…を日常礼拝することにより間接的に祖先祭祀等の目的に結びつくものも含むものと解される。

 そうすると、『これらに準ずるもの』には、庭内神し(これは、一般に、屋敷内にある神の社や祠等といったご神体を祀り日常礼拝の用に供されているものをいい、ご神体とは不動尊、地蔵尊、道祖神、庚申塔、稲荷等で特定の者又は地域住民等の信仰の対象とされているものをいう。)、神たな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものであって、商品、骨とう品又は投資の対象として所有するもの以外のものが含まれるものと解される」と説示した。

 そして、本件各祠の敷地が庭内神しそのものでないことを理由として、本件非課税規定にいう「これらに準ずるもの」に該当しないというYの主張に対しては、庭内神しとその敷地とは別個のものであり、敷地が当然に「これらに準ずるもの」に含まれるということはできないものの、本件非課税規定の趣旨及び「墓所」及び「霊びょう」の解釈等に鑑みれば、「庭内神しの敷地のように庭内神し等の設備そのものとは別個のものであっても、そのことのみを理由としてこれを一律に『これらに準ずるもの』から排除するのは相当ではなく、当該設備とその敷地、附属設備との位置関係や当該設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形や、当該設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的、現在の礼拝の態様等も踏まえた上での当該設備及び附属設備等の機能の面から、当該設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備も当該設備と一体の物として『これらに準ずるもの』に含まれるものと解すべきであって、「本件敷地についても、庭内神しである本件各祠との位置関係や現況等の外形及び本件各祠等の機能の面から、本件各祠と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地であるか否かを検討すべきである」と判示した。

 結論として同判決は、「本件各祠は、庭内神しに該当するところ、本件敷地は、…外形上、小さな神社の境内地の様相を呈しており、…本件各祠やその附属設備…は、建立以来、本件敷地から移設されたこともなく、その建立の経緯をみても、本件敷地を非課税財産とする目的でこれらの設備の建立がされたというよりは、真に日常礼拝の目的で本件各祠やその附属設備が建立されたというべきであるし、祭事にはのぼりが本件敷地に立てられ、現に日常礼拝・祭祀の利用に直接供されるなど、その機能上、本件各祠、附属設備及び本件敷地といった空間全体を使用して日常礼拝が行われているといえる」から、「本件敷地は、本件各祠と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地ということができる」ため、本件敷地は、本件非課税規定にいう「これらに準ずるもの」に該当するとして、Xの請求を認容した。

(執筆:一般社団法人アコード租税総合研究所)