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東京地裁平成23年12月13日判決(裁判所HP)
―地方税法348条2項3号にいう非課税とされる「境内地」の意義―
(2014/02/10)

1.事案の概要

 本件は、本件各土地を所有する原告Xが、A都税事務所長から、本件各土地について固定資産税及び都市計画税の賦課処分(以下「本件賦課処分」という。)を受けたため、本件各土地のうち課税対象(異議決定による減額処分後のもの)である部分(以下「本件課税土地」という。)、は、Xから無償で借り受けているB寺が動物専用墓地として使用している土地であり、地方税法348条2項3号(平成22年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)所定の「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内地」に該当するため、固定資産税及び都市計画税を賦課することはできないとして、A都税事務所長の所属する公共団体である被告Yに対し、本件賦課処分(異議決定による減額処分後のもの)の取消しを求めた事案である。


2.争 点

 本件課税土地は、地方税法348条2項3号の「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内地」に該当するか否か。


3.判決の要旨

 東京地裁平成23年12月13日判決は、1)地方税法348条2項本文は、「固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない」と規定し、同項3号は「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」を掲げていること、2)地方税法702条の2第2項は、「市町村は、第348条第2項…の規定により固定資産税を課することができない土地又は家屋に対しては、都市計画税を課することができない。」と規定していること、及び3)宗教法人法3条は、境内地とは、同条2号から7号までに掲げるような宗教法人の同法2条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の土地をいうものと規定し、同法2条は、「宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること」を宗教団体の主たる目的としていること、を確認した上で、これら各規定からすると、「地方税法348条2項3号にいう非課税とされる境内地とは、宗教法人が宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成するために必要な当該宗教法人固有の土地であって、当該宗教法人が専らその本来の用に供するものをいうものと解される(「境内地」に関する宗教法人法3条各号の例示の中で、本件において主として検討すべきものは、4号の「宗教上の儀式行事を行うために用いられる土地」である。)」と判示した。

 そして、「宗教法人が専らその本来の用に供する境内地」に該当するか否かについては、「当該境内地の使用の実態を、社会通念に照らして客観的に判断すべきであ」るところ、本件課税土地については、「B寺が所有者であるXから無償で貸与を受けて使用しているものであるから、本件課税土地の使用の実態を判断する際も、B寺を基準として判断すべきことになる」と述べた上で、本件課税土地は、「B寺により浄土宗の儀式行事を行う場として利用される機会はあるものの、その機会はごく限られたものにすぎないのであるから、本件課税土地がB寺の儀式行事というその本来の用に専ら供されている土地であると認めることはできない。

 そして、B寺が宗教の教義をひろめ、信者を教化育成するために本件課税土地を利用している事実を認めるに足りる証拠はないから、本件課税土地は地方税法348条2項3号の『宗教法人が専らその本来の用に供する境内地』には該当しないというほかない。」と判示して、Xの請求を棄却した。

 なお、宗教法人が収益事業を行うための施設は、宗教法人の本来の用に供されていることにはならず、地方税法348条2項3号の「専ら本来の用に供する」ものに該当する余地がない旨のYの主張に対しては、「宗教法人法6条2項は、宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができるとしており、宗教的色彩の有無と収益事業該当性の有無とは必ずしも排斥し合うものとはいえないこと、施設の客観的性格とそこで行われる活動・事業の性格とを区別して検討すべき場合もあること等からすると、当該施設において行われる活動が収益事業に該当することをもって、直ちに当該施設である土地等が地方税法348条2項3号の非課税土地等に該当することを否定すべきことにはならない」として、この点に関する限りYの主張を採用していない。

(執筆:一般社団法人アコード租税総合研究所)