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最高裁平成24年1月13日第二小法廷判決(裁判所HP)
―保険金の支払を受ける者以外の者が負担した保険料と一時所得―
(2013/09/10)

1.事案の概要

 Xら(原告・被控訴人・被上告人)の経営する法人が契約者となり保険料を支払った養老保険契約に基づいて満期保険金の支払を受けたXらは、その満期保険金の金額を一時所得に係る総収入金額に算入した上で、その法人が負担(損金処理)した部分を含む保険料全額が一時所得の金額の計算上控除し得る「その収入を得るために支出した金額」(所法34(2))に当たるとして、所得税(平成13年〜15年分)の確定申告をしたところ、税務署長Y(被告・控訴人・上告人)から、本件保険料のうちその法人が負担した部分(上記保険料のうち2分の1相当額)は「その収入を得るために支出した金額」に当たらないとして、更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたことから、Xらが、その取消しを求めた。


2.争 点

 養老保険契約の満期保険金の支払を受ける者以外の者が負担した保険料は、その支払を受ける者に係る一時所得の金額の計算上、所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に該当し、総収入金額から控除できるか。


3.判決の要旨

 最高裁平成24年1月13日第二小法廷判決は、所得税法34条2項は、一時所得に係る収入を得た個人の担税力に応じた課税を図る趣旨のものであり、同項が「その収入を得るために支出した金額」を一時所得の金額の計算上控除するとしたのは、「一時所得に係る収入のうちこのような支出額に相当する部分が上記個人の担税力を増加させるものではないことを考慮したものと解されるから、ここにいう『支出した金額』とは、一時所得に係る収入を得た個人が自ら負担して支出したものといえる金額をいうと解するのが上記の趣旨にかなうものである。

 また、同項の『その収入を得るために支出した金額』という文言も、収入を得る主体と支出をする主体が同一であることを前提としたものというべきである。

 したがって、一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう『その収入を得るために支出した金額』に該当するためには、それが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえる場合でなければならないと解するのが相当である。」とした上で、本件保険料のうち法人が負担した部分は、所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に当たるとはいえず、これを本件保険金に係る一時所得の金額の計算において控除することはできないと判示した。

 また、Xらの請求のうち、過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求める部分については、例外的に過少申告加算税の課されない場合として国税通則法65条4項が定める「正当な理由があると認められる」場合に当たるか否かが問題となるところ、この関係の諸事情につき更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻した。

 なお、本判決には、須藤正彦裁判官の補足意見が付されている。

(執筆:一般社団法人アコード租税総合研究所)